グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

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グローバル潮流を学ぶ

生物多様性保全への取り組み

生物多様性に関する取り組みは、気候変動対策と並ぶ重要なテーマです。世界経済フォーラムの年次総会(通称ダボス会議)に合わせ発表された「グローバルリスク報告書2021」では、発生の可能性が高いリスク第5位に、生物多様性の損失が入りました。Top3はいずれも気候変動関係、第4位は感染症です。世界主要企業の環境活動評価として最重要の格付け指標であるCDP(Carbon Disclosure Project)の調査でも、生物多様性に関する指標を追加する動きがあります。また、企業が発行するサステナビリティ報告書について、そのガイドラインを制定しているGRI (Global Reporting Initiative)は、GRI304において、企業が情報開示すべき生物多様性に関する項目を上げています。先進的な企業は既にそれら対応に向けた取り組みを始めています。グローバル・コンパクト・ネットワークジャパンでは、専門家との対話やメンバー同士の交流を通して環境経営に関わる変化点の最新情報を得て自社の活動に活かそうと、環境経営分科会ESG分科会が活動しています。

なぜ重要視されるのか?

重要性が増す経緯として、主に3つあります。2010年に生物多様性に関するCOP10が開催され、2020年までの短期目標として愛知目標が設定されました。しかし2020年完全に達成された目標はなく、国際目標と国家戦略の整合性不備があらわになりました。2つ目は、現在策定中である「ポスト2020生物多様性枠組(GBF)」において、30年までに「自然の損失を基準年比で実質ゼロ」にする目標が検討され、企業への要求が増すことが予想されます。先進企業はその重要性を理解し、政府に対してAmbitiousな目標を求める連合体“Business for nature”には、世界中の多くの企業から賛同の声が上がっています。更に3つ目はCOVID19によるパンデミックです。2000年以降感染症が増え、自然破壊の影響は深刻さを増しています。さらに食料の安定確保も困難になる中、食料システムの見直しは急務であり、食に対する生物多様性の重要性も叫ばれています。

これらを受け、世界主要企業の環境活動評価として最重要の格付け指標であるCDP(Carbon Disclosure Project)の調査でも、生物多様性に関する指標を追加する動きがあります。さらに、企業が情報開示する際のフレームワークとして、TNFDも発足しました。

加速のための国際動向

企業における生物多様性保全への取り組みを加速するために、2つの大きな国際動向を紹介します。それぞれ、気候変動対策として既に主流となっている、SBTおよびTCFDの生物多様性バージョンです。

Science Based Targets for Nature
科学的根拠に基づく自然に関する目標を設定する

バリューチェーン上の水・ 生物多様性・土地・海洋が相互に関連するシステムに関して、企業等が地球の 限界内で、社会の持続可能性目標に沿って行動できるようにする、科学的根拠に基づく、測定可能で行動可能な目標です。2022年に向けてSBTs for Natureの設定手法の開発が進められています。

生物多様性に関する情報開示のフレームワーク

金融機関や企業に対し、自然資本および生物多様性の観点からの事業機会とリスクの情報開示を求める、国際的なイニシアティブです。2021年6月に正式発足しました。

パリ協定・ポスト2020生物多様性枠組・SDGsに沿って、自然を保全・回復する活動に資金の流れを向け直し、自然と人々が繁栄できるようにすることで、世界経済に回復力をもたらすことを目指す。スタート当初から投資家も大きな関心を寄せています。

TNFDのロゴ画像

基盤となる国家間の枠組み:生物多様性条約

生物多様性の保全を目指す唯一の国際条約です。1992年6月ブラジルで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で、条約に加盟するための署名が開始され1993年12月29日に発効しました。生物多様性の保全だけでなく、自然資源の「持続可能な利用」、および遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分を目的としています。日本も1993年5月に締約国となりました。