ニュース 2013年
【レビュー】2012年度 GC-JNシンポジウム ~持続可能な開発と人権~
更新日:2012年12月4日、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)は今後の行動に向けた議論と考察を深める場として、「持続可能な開発と人権」をテーマに、マルチステークホルダーによる年次シンポジウムを開催致しました。シンポジウムには国連機関、政府、学術・研究機関、企業、NGOなど多様なセクターから約200名が参加し、知見の共有と議論を行いました。
持続可能な開発と人権
1992年の「国連環境開発会議(地球サミット)」から20年後となる2012年6月、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催され、この20年間に達成した成果と進捗状況を振り返り、行動と進展のさらなる促進に向けて協議が行われました。また、リオ+20のサイドイベントとして国連グローバル・コンパクトが主催したCorporate Sustainability Forum(CSF)においても「持続可能な開発」が議論における重要なキーワードとなり、そのなかでとりわけ「人権」が重要な役割を果たしていくことが確認されました。また一方、グローバリゼーションの過程において、国家が国民の生命、安全を守ることのできない状況が生じる中で「人間の安全保障」という概念が生まれ、ここ数年では「ラギーフレームワーク」や「ISO26000」の策定など、人権に関する課題の持つ重要性はますますその高まりを見せています。
当日は有馬代表理事による開会の挨拶から始まり、緒方貞子氏(独立行政法人国際協力機構特別顧問)から「人間の安全保障~Human Security Nowから10年~」をテーマに基調講演をいただきました。緒方氏はアマルティア・セン・ケンブリッジ大学トリニティーカレッジ学長とともに、「人間の安全保障委員会」の共同議長として、2003年の最終報告書(英文名:Human Security Now)を取りまとめ、その後も「人間の安全保障」概念の発展と現場への適用に尽力されて来ました。講演では、アジア、アフリカ、旧ユーゴスラビア、旧ソ連など世界の地域を例に取り、実際に国連難民高等弁務官(UNHCR)として直面した事例を交えながら「人間の安全保障」という概念の成立過程と、それを基礎とした人々を中心とする経済的・社会的発展の重要性についてお話いただきました。
つづいて後藤敏彦氏(特定非営利活動法人(NPO法人)サステナビリティ日本フォーラム代表理事)より「人権を取り巻くグローバル潮流について~ISO26000 とラギーフレームワーク~」をテーマに、人権を語る上で欠かすことのできない文書である「ラギ―フレームワーク」や「ISO26000(社会的責任に関する手引)」について解説をしていただきました。また、この日は河上隆氏(内閣府男女共同参画局総務課政策企画調査官)をお招きし、同局が日本国内での普及・促進を進めている「女性のエンパワーメント原則(WEPs; Women’s Empowerment Principles)」について、原則の概要説明と署名手続きについてお話いただきました。
シンポジウム最後のパネルディスカッションでは、アカデミア、企業、NGOの方をお招きし、「ISO26000の7つの中核主題における人権の取り組み」としてそれぞれの事例をご紹介いただきました。また、グローバルな人権課題への対処、企業内における人権意識の浸透と推進、人権デューデリジェンスの具体的な内容など、GC-JN会員企業の人権に関する関心事を中心に、客席からの質疑を交えながら活発な議論が交わされました。
パネルディスカッションご登壇者 | |
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アムネスティ・インターナショナル日本 事務局長 | 若林 秀樹 氏 |
株式会社リコー CSR室スペシャリスト | 赤堀 久美子 氏 |
伊藤忠商事株式会社 広報部CSR・地球環境室長 | 小野 博也 氏 |
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 常任顧問 | 古谷 由紀子 氏 |
株式会社大和総研 調査本部主席研究員 | 河口 真理子 氏 |
モデレーター:同志社大学大学院ビジネス研究科 教授 | 近藤 まり 氏 |