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持続可能な開発目標(SDGs)

新しい世代を担う若⼿たち~有志の“つながり”で目指すSDGsへの貢献~

社会課題を考える有志団体

社会課題を考える有志団体

企業に勤めながら、業務時間外に自主的にSDGsに取り組んでいる若手たちがいる。その活動「しゃか丸("社会課題を解決してまる儲け")」の中核を担い、「有志で社会課題を考えるワークショップ」を企画・運営している富士フイルム猪股壮太郎さん、横田泰代さん、味の素高橋裕典さん、鳥居恒太さん、富士ゼロックス船田美乃さん、そして大坪愛さんにお話を伺った。

ー皆さんは日ごろどのようなお仕事をされているのでしょうか?

高橋さん:2017年4月に異動になり、今は途上国向けの栄養改善に関係する事業開発を担当しています。それまでは研究所、九州の工場に勤務していました。

猪股さん:医療機器の素材開発を担当しています。趣味のパドルサーフィンをきっかけに海洋ごみ課題に関心を持ち、仕事を通じてそれを解決していきたいと考えています。

大坪さん:環境経営グループに属し、環境コミュニケーションや生物多様性保全推進を担当しています。2017年春に異動してきたので、いま色々勉強しているところです。

船田さん:私はシステムエンジニアで、個別企業のお客様を担当しています。約10年間、同じお客様を継続して担当しており、システムやサービスの提供だけでなく、お客様との関係性を深めていく役割も担っています。

横田さん:マーケティング手法の探索や広告データの可視化などを担当しています。入社してインクジェットの研究・開発に携わった後、新規事業創出プロジェクトに携わり、4月に今の部門に異動してきました。

鳥居さん:入社4年目です。パソコン用の絶縁材料を作っています。もともとモノ作りが好きなので、社会課題を解決するモノの開発をしたいと思っています。

ー皆さん異なる会社でそれぞれ違うお仕事をされていますが、なぜ3社が一緒になって「有志で社会課題を考えるワークショップ」を行うことにしたのですか?

猪:富士フイルムには「くものす」という有志活動団体があります。そのメンバーに対して、高橋さんからCSV(Creating Shared Value:社会価値と経済価値を両立させる事業形態)について伺う機会を、活動メンバーの一人が作ってくれたのが僕達と高橋さんとの出会いでした。ちょうど同じタイミングでエシカルや環境問題に興味を持ち始めていたところだったんです。

横:高橋さんにはその後も親しくしていただいていたので、すぐに高橋さんにオファーしました。その流れで富士ゼロックスの有志にも声をかけました。

高:味の素からの参加者は、社内に「くものす」のような有志の活動を作りたいという思いがあったので、協働することにしたんです。

有志活動団体

ー「くものす」はそもそもどういう団体なのですか?

猪:会社のリソースを活用してやりたいことを実現しようという富士フイルムグループ内の有志の集まりです。若手社員はなにかやりたくても社内の横のつながりが少ないために行動を起こせず、人伝いにつながるのを待っている内に時期を逸してしまうということへの問題意識が設立のきっかけです。そこで人と人とが蜘蛛の巣のような強靭で縦横無尽なネットワークでつながることで、人脈・情報・夢をキャッチし、社員自らがやりたいことに挑戦できる場をつくることを目指して活動しています。

横:このところ、企業の若手が自主的に業務外で活動する動きは広がっていて、現在46社の大企業若手有志が「One JAPAN」に参加しています。「One JAPAN」では、大企業に所属する若手社員が挑戦できる土壌を作ること、そして参加団体が協働・共創しながら活動を実践していくことで、日本から世界を良くする活動を目指しています。富士フイルムの「くものす」と富士ゼロックスの「秘密結社わるだ組」も「One JAPAN」に参加しています。

船:富士ゼロックスの有志団体「秘密結社わるだ組 」は活動を始めてから6年が経過しており 、「One JAPAN」の中でも活動期間が長い存在です。もともとは組織を超えた人のつながりを築こうという ことから始まりました。

ーSDGsをテーマにしようと思ったのはなぜですか?

猪:元来エシカルや環境といったテーマに関心がある人たちが集まったのですが、いきなりCSVに取り組むにはハードルが高すぎると感じていました。そこで社会的価値からビジネスを考えようということになり、ちょうどSDGsが世に出始めた頃だったので、SDGsを理解しかつ世の中に広めていくことを主な目的として掲げることにしたんです。それにSDGsは17も目標があるため、今後の活動も広げやすいという理由もありました。

ー「有志で社会課題を考えるワークショップ」ではどのような活動を行ったのでしょうか?

猪:これまでにワークショップを3回開催しました。「行動する」にこだわっていたから主体的に考える場にこだわりたかったわけです。第1回は、SDGsの目標2(飢餓)と3(健康)を取り上げ、25名くらいが参加しました。「One JAPAN」から参加してくれた人たちもいましたね。第2回は目標14(海の豊かさ)と15(陸の豊かさ)を議論し、参加者から解決につながるビジネス案を実際に提案してもらいました。第3回はフィールドワークとワークショップの組み合わせで、茅ケ崎の海洋ごみの回収ボランティアに参加した後、海洋の課題解決を議論しました。

有志で社会課題を考えるワークショップ

横:企画にあたり、親密な関係性で分かち合える場を作りたいと考え、ワークショップ形式で開催することにしました。ファシリテーションのノウハウやスピーカーの手配、場の準備はくものす活動から継続できるものがあったため、うまく実施することができたと思います。より有効な議論になるように、2回目はSDGs目標のロゴカードを各テーブルに配布するなど工夫しました。

大:初回からR&D、営業、本社スタッフなど、色々な職種の人が参加してくれました。2回目をやろうと思ったのは、初回の経験からバックグランドが違う人たちと知り合い議論することは、得られるものが大きいと感じたからです。

ーワークショップを実施してどのような刺激がありましたか?

船:有志の活動なので、感度が高く、知見や人脈のある人に知り合えたことは大きな刺激になりましたね。ワークショップだと自分では思いつかないことを「あなたの会社だったらこれができるのでは」と前向きにズバリと言ってもらえて新たな気づきがありました。

鳥:業務だと仕事の中身を深く掘り下げて何をすべきかまず考えますが、ワークショップでは「そもそも自分は何をしたいか」を考えることができ、ワークショップ後自分の仕事のやり方も変わったと感じています。自分が何をしたいのか、どうしたいのかということをちゃんと考えて仕事に取り組むようになりました。

大:ワークショップには複数社から知らない人たちが参加していたので、職場関係では得られない見方や気づきがあって、化学反応が起きたような気がしました。他者を知って自己を知るというように、他者と関わることで、自分の特技に気づいたりするんじゃないでしょうか。

有志で社会課題を考えるワークショップ

ーちょっと意地悪な言い方をすると、「意識高い系」の人たちが集まったから化学反応が起こったのかもしれませんね。

横:私自身自分のことを意識高い系とは思っていません。ただ、一緒にやりたいという仲間と協力していきたいというスタンスでした。

高:実際、2回目は間接部門の人を呼んだりしました。特に意識高い系のメンバーだけで集ったという感じはないですね。

船:この活動に限らず、有志活動へ勧誘すると、人によっては、 「それが何になるんですか」、「休日まで使ってやる意味はあるんですか」、と言われることもあります。私は意識が高いからやっているのではないけれど、周りからはそう見られているのかもしれません。でも、自分も含め多くの人は仕事が細分化、専門化されているために自分の仕事が社会の何に役に立っているのか実感しにくいのではないでしょうか。社会課題を直接的に解決しているようには実感しにくいのですが、こうした機会に参加することで課題を知り、自分の仕事と社会とのつながりを感じることができ、仕事のやりがいにつながるのではないでしょうか。お金になるわけでも、会社に認められるわけでもない、けれどもビジネスアイディアにつながることにはなるかもしれません。それだけで意識が高まると思います。

横:「意識高い系」というと距離を置いているようであまりすきな言葉ではないですが、それなりに問題意識は高かったと思います。それで言うと「問題意識高い系」なのかもしれませんね。

ー自分の時間を使ってまで有志活動に参加しようという気持ちはどこから来るのでしょうか?

高・船:一番の理由は、楽しいからです。

大:声をかけた人が全員参加したわけではありません。その差はどこから生じるのかと考えると、好奇心や、視点を広げたいという思いなのかもしれません。

鳥:毎日マラソンする人は目に見える効果を求めているという点で、意識高い系と言えますよね。しかし私たちの今の活動は他者が見てわかりにくいし伝わりにくい。そう考えると参加者の幅を広げるには、活動の認知のされ方、社会への広がり方が重要かと思います。


猪:自分の場合は、海洋ごみ課題への関心が大きかったですね。今の自分の仕事では海洋ごみという課題をすぐには解決できません。なにかしたいけど、ボランティアだけでは足りないと思い、解決に近づけるための一つの手段として大企業同士のつながりを活用して一人でも多くの人にSDGsを通じて社会課題の実態を知ってもらい、ワークショップを通じて自分事に感じてもらおうと思いました。最終的には、自分たちの技術で課題の解決に直接寄与したいと考えています。

横:私はメーカー勤務なのでどこかで人の役に立つモノを生み出したいという欲求があります。社会課題と向き合うことはメーカーにとってとても重要なことだと思います。忙しいと経済的判断に偏りがちですが、損得だけで判断すると人生を損してしまうって思います。

高:若いうちは、社会課題へ貢献したいという高い意識がありますが、年次が高まるうちに原点を忘れがちになる気がします。そのため、今回の勉強会のように、その原点に戻っていく試みを意識的に行うことが必要だと思います。

船:今は物が売れてしかたない時代ではなくなり、むしろ物があふれています。そんな現代だからこそ、本当の価値は何かと考え、仲間と共感し、シェアしていくことが大切なのではないでしょうか。そして、企業・個人にとって、これから価値があることは社会課題の解決なんじゃないかと思います。今は何でもいいから作れば売れるわけではないので、こうした活動を通じて、自分が生活していること、周りと共に生きていくことに貢献できる糸口を見つけていければと思います。

ー今後の活動に関する展望と各自の抱負を教えてください。

猪:具体的には決まっていませんが、このメンバーですぐ企画して商品化するには時間の制約もあり難しい。でもここで出来たつながりはとても良いものなので、ぜひ続けていきたいです。各人が持っている課題は違うので、今後はそれぞれが理解を深めるためにイベントを企画したり、プロトタイプを持ち寄って議論したりするようなコミュニティとして存在したいと思います。

高:インプットからアウトプット中心の活動に移行していきたいです。SDGs解決を考えながらモノ作りなどにつなげていきたいと思います。

横:事業化となるとだんだんハードル高くなってくると思うので、まずはSDGsを広める活動を続けていきたいですね。一方、同じことばかりやっていてもつまらないと思うので、3社で具現化するのは難しいとしても、個々人が持ち帰って自分の仕事につなげていき、困った時に支援してもらえるプラットフォームとして活用していければと思います。

船:個々人でやりたいことを、皆がコミュニティで発信してくれるようにしたいです。そのための共通の言語としてSDGsがあり、それが活動のきっかけになったので今後もSDGsを活用してつながりを増やすことも続けたいと思います。

高:私はそういう思いのある若い人がたくさん職場にいるので、そういう思いを活かせる場を社内でも作っていくようにしたいと思います。今後も発信していき仲間を増やしていきたいです。SDGsはそれにぴったりと言えるでしょう。


猪:個人的には海洋ゴミ問題の解決を最終ゴールとして活動を続けるつもりです。解決したいこと、方法も自分の専門性を使ってチャレンジします。現状は自分の技術深耕に集中し、それを応用した課題解決を考えています。

大:環境コミュニケーションが私の仕事の一つなので、こういうコミュニティで学ぶことは多いと感じます。直接的に現業務とつながりがなくても、幅広く課題を見て、幅広い出会いがあるので、仕事にフィードバックしながら関わっていきたいと考えています。

船:私はフットワークを軽く、普通の人に対して普通に活動した成功例を知ってもらえるようなきっかけを職場で作りたいですね。ちょっと発信するだけでも変化を作れるかもしれないので、今後もこのコミュニティを通じてつなげていきたいです。

横:私は社会課題を身近な課題に置き換えて、身近な人の役に立てるようになりたいと思います。例えばフードロスの場合は、自分たちが排出しているものがどのように処理されているかをまず知ることが大事ですね。

鳥:個人的な目標としては、一つは自分にとっての新しい武器を考えることです。材料関係とは違う側面の技術の専門性を持ちたい時、勉強して探しているところではありますが、環境問題が良い切り口になると思います。二つ目は、独立した社会人として、自分の専門性を見つけたいですね。そのためには今の仕事だけにとらわれない人間でいたいし、そのように努めたいと思います。

有志活動団体

(取材・文=GCNJ上野明子/泉沙織・IGES加藤瑞紀 取材日2018/2/6)

取材こぼれ話
何かしたいけれど、何をすればよいかわからないという人が多いなかで、SDGsをキーワードに既存の企業の枠を超えたつながりを築けることは素晴らしいと思いました。それを皆さん盛んに「つながり」と表現していました。いつもとは違う視点に触れることで、社会課題に取り組んでいく際の自分の強みへの気づき、そして将来的には新たなビジネスの芽を見つけていくことにつながっていくのではないかと期待しています。