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持続可能な開発目標(SDGs)

「働きがい」を提供し続ける企業 ――目標8を軸とした富士ゼロックスのサステナビリティ経営

富士ゼロックス株式会社

富士ゼロックス株式会社

http://www.fujixerox.co.jp/

富士ゼロックス株式会社におけるSDGsの取組み状況を同社CSR部部長吉江則子様に伺った。

ー御社のCSR推進体制とミッションを教えていただけないでしょうか?

富士ゼロックスのCSR部は、富士フイルムグループのCSR推進と連携しつつ、次の3点をミッションとして取り組んでいます。1つ目は、中長期の経営を考えた場合の自社体制と、世の中の動きのギャップを指摘していく「ストラテジー」です。2つ目は、このストラテジーを各機能に展開していく場合に、CSR部がプロセス上で関係する部門(調達、生産、人事等)にCSR視点での意見をインプットし、連携して推進する「オペレーション」です。3つ目は、社内外に対してCSRに関する発信(啓発を含む)と、それに対しての反応を得る「コミュニケーション」です。

ー中長期に目指すものとしてSDGsのゴール8をメインに掲げられた点について、意外な印象を持ちました。実際にはどのようなプロセスを経て、それが掲げられるようになったのでしょうか?

富士ゼロックスと言えば複写機の会社というイメージをお持ちのことと思いますが、実際にはコミュニケーションの会社と捉えています。社会の中で紙と業務は表裏一体であり、1970年代に「モーレツからビューティフルへ」、80年代に「ワークステーション」、88年に「ニューワークウエイ」というキーワードとともに、働き方変革を唱えてきました。

ゴール8はディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)のゴールですね。先進国でも生き生きと働き、その人にしかできないことをやる、それにより会社も社会も成長することにつなげる。そうした働き方・働きがいを提供できる会社となることを目標に、お客様に対して働き方の効率化の提案を行ってきました。ゴール8を据えることはCSR部からの提案でしたが、社内での違和感は特になく、総合企画部等でも受け入れられ、最終的にはトップの決定に至りました。

ーSDGsが出てきて、変わったこと、重視するようになったことはおありですか?

これまでずっと推進してきたことに対し、SDGsという枠組みが出てきたことにより、役員レベルの認識の統一につながったと思います。全社の部長が集まる会議で社長がプレゼンする際にも、SDGsについて普通に言及されるようになりました。また、たとえば販売会社の社長が自社の社員に話して、SDGsに対して何ができるかという問いかけが出てくるようにもなってきました。今年に入り、そういった動きが活発化しています。

SDGsの目標、ターゲットと事業との関連についてこれから重要なのは、マテリアリティから落とし込んで、どの分野を強化していくのかということを検討し、実施していくことだと思っています。中期戦略を検討するコーポレートの企画部門や、新成長事業創出部といった新しい分野への投資を検討していくセクションと連携して、SDGsを組み入れていくことが求められます。現在、こうした問題意識をもって経営層に問題提起をしている段階です。

ーESGの観点からの投資家への対応についてはいかがでしょうか。また、ESG評価が高い会社は株価が上がるといった記事もありますが、SDGsを推進する上でGPIFの動向は後押しになっていますでしょうか?

富士ゼロックスは富士フイルムホールディングス傘下の事業会社であり、非上場でIR部門もないことから、投資家への意識は薄い部分があります。ですが昨今のトレンドを見ると非常に重要なトピックですので、経営層を対象として、投資家からESGについての説明をしてもらう場やディスカッションの場を設けたいと思っています。

GPIFの動向については、IR・投資家対応をする富士フイルム社内で後押しになっていると思います。私自身も4年前に富士フイルムホールディングスに出向しIRを担当していましたが、当時と比べて、だいぶ雰囲気が変わってきたと聞いています。ESGと株価との関係につきましては、国連グローバル・コンパクトが9月に開催したリーダーズ・サミットに参加した際に、フィナンシャルセクターにも、関係性はまだ不明であり、リスク排除の点でみていると言っている人もおりました。私自身も過渡期という認識でおります。ただし世の中の流れは、短期だけではなくなってきているので、今後はそこを見られるでしょう。特にガバナンス面で、どう会社が経営されているのか、あるいは経営者が自身の言葉で、どのようにして10年後に社会で必要とされる企業にしていくのかというストーリーを語れるかどうかを投資家が見てくると思っています。

ーゴール8とも関連すると思いますが、御社ではCSR調達に関連する取組みに力を入れていると伺いました。その具体的な取組みをお聞かせ願います。

富士ゼロックスの商品は90%が海外生産(中国、ベトナム等)ですので、海外の取引先との関係性は非常に重要です。アジアの生産拠点がある地域では、労務問題や環境対応に課題があることなどで、さまざまなトラブルが起きやすくなっています。

富士ゼロックスの深圳工場でも、取引先の部品納入の遅延でラインがストップするなど、安定的な操業や供給が課題となっていました。そこでCSR調達を導入することにしました。CSR調達という活動は、取引先の経営者にCSR経営を実践していただき、安定した労使関係や工場経営をしていただくことです。しかし、取引先の皆様にお願いする前に、富士ゼロックス深圳の工場でCSR課題を整理する必要がありました。その中で、地方から出稼ぎで来ている若い従業員を丁寧に育成することが、労使関係の安定に不可欠だ、ということがわかりました。そこで、2006年度より、富士ゼロックス深圳で、工場従業員を教育するキャパシティ・ビルディング活動を開始しました。深圳には地方から就職してくる方が多く、彼らが心身ともに幸せに働ける仕組みが必要で、そのために現地NGOの協力を得て、従業員支援プログラムを立ち上げたのです。具体的には、①意見を述べる仕組みとして、CSR意見箱やイントラを活用した意見交換等、②社会人教育の仕組みとして、生産ラインで働く従業員向け及び組長向けの教育と新人向けの教育、③心理・精神的な安定を支える仕組みとして、電話・対面の心理カウンセリングや心理健康関連講座などがあります。これらは、当初は若い従業員を対象にスタートしましたが、現在は管理職含向けのプログラムも提供しています。深圳の社長自身も講義に立つなど、富士ゼロックスでの働きがいを若い人たちに感じてもらうようにしているんですよ。

CSRがないと、QCD(品質・コスト・納期)が最大化しないということをCSR部として訴えてきました。コストがかかっても愛社精神を育てる努力をしてきた結果、2015年・2016年と続けてラインストップ時間がゼロになりました。また、離職率は現地平均の1/3となり、最終的には会社のコストメリットも出ています。それがニュースで取り上げられたり、賞を受けたりもしています。


http://www.fujixerox.co.jp/company/csr/sr2017/suppliers/theme.html#anc01

取引先のCSRリスクに起因する深圳工場のラインストップ時間の推移

取引先のCSRリスクに起因する深圳工場のラインストップ時間の推移

ーまさにSDGsが求めるような取組みと言えますね。こうしたCSR調達のための取組みは、別の拠点でも行われているのでしょうか?

もともと、日本・韓国・中国で、同時に開始しました。その後、最大生産拠点である深圳に集中した活動をしていたのですが、深圳で培ってきた「自社生産拠点のCSR」および「CSR調達」のノウハウは、ベトナムの新しい拠点にも広げ、さらに展開強化しています。2015年8月には、生産拠点、調達拠点、富士ゼロックス生産本部、調達本部、本社のCSR推進者が深圳に集まり、「生産・調達・本社のキーパーソンによるCSRセッション」を開催しました。このセッションでは、深圳工場の生産ラインを自拠点や取引先拠点に見立てて、問題点の確認方法や指摘方法について実践しながら学びました。

また、当社と取引先が同じ目線でCSR調達の改善活動が出来るように、2017年度中には富士ゼロックスハイフォンでもその活動をスタートする計画です。

このような取組みの結果、富士ゼロックス深圳に加え、富士ゼロックス上海、富士ゼロックスハイフォンでも、取引先のCSRリスクを原因とするラインストップ時間はゼロとなっています。

「生産・調達・本社のキーパーソンによるCSRセッション」の様子

「生産・調達・本社のキーパーソンによるCSRセッション」の様子

https://www.fujixerox.co.jp/company/public/sr2016/value04.html#sec1

ー御社は国連グローバル・コンパクトが進めているSDGsのアクションプラットフォームに参加されていますね。参加を通じて得たものや、率直なご感想をお聞かせいただけないでしょうか?

富士ゼロックスは国連グローバル・コンパクトのリード企業ということもあり、「Breakthrough Innovation for the SDGs」、「Blueprint for SDG Leadership」、「Reporting on the SDGs」、「Decent Work in Global Supply Chains」という4つのプラットフォームに参加しています。ブループリントとサプライチェーンは本社のCSR部が、SDGsレポーティングはアジア・パシフィック地域を統轄するシンガポールのCSR担当マネージャーが、イノベーションはR&Dに属するコミュニケーション技術研究所の研究員が、それぞれ参画しています。

各プラットフォームでは、数回のフェイスtoフェイスのミーティングと、ウェビナーなどのオンライン経由で議論を交わし、報告書というかたちでアウトプットを出しています。例えばイノベーションのプラットフォームでは、1年間をかけて、社会課題やSDGsと繋がっている自社の経営課題をピックアップし、それを変える商品などを提案することがテーマとなりました。アウトプットについては、ブループリントではSDGsでどのようにリーダーシップを取れるかについての考え方と、各17ゴールの取組み例が整理されたものが出されましたし、レポーティングでは169のターゲットに対して企業の取組みを測る既存の指標(GRIスタンダードなど)を整理したものが出されました。それぞれのプラットフォームでは、研究機関のサポートを受けつつ事務局がたたき台を作り、意見を入れ込んでいったのですが、欧米の先進企業のCSR担当者の意見や考えに直に触れたことは非常に有益でした。ただ、時差の関係でウェビナーなどは真夜中に、かつ英語で開催されるため、なかなか大変な面もありますね。より重要なこととして、参加者個人の啓発にとどめるのでなく、プロセスの中で得たものやアウトプットをどう消化して自社が使えるようにアレンジをするかが課題と言えます。もちろん、日本語への翻訳もあれば、それに越したことはありません。この点は、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンさんのお力添えも頂ければと思うところです。

ー最後に、SDGsへの期待や今後の抱負について一言いただけないでしょうか。

SDGsの各ゴールは、相互に関係しています。たとえは、ゴール8の「働き方」で始まっても、それが、環境、教育、ジェンダーなどと他のゴールと連関していく可能性を秘めています。言い換えれば、これまでよりもさらに多様な社外のアクターと連携していくことで、新たな価値を創造していくことが可能になります。中長期の複眼的視点による、富士ゼロックスならではの社会課題解決で何をすべきか、ぶれることなく社内外に問いかけ続けていきたいと思います。

(取材・文=GCNJ泉沙織・IGES小野田真二・矢野さやか 取材日:2017年11月10日)

取材こぼれ話
インタビューを進めていくうちに、会社全体として、社員の働き方、働きがいをずっと追求されてきたのだろうなと思える、熱い想いが伝わってきました。良い意味で、日本人らしい「人を大切にする」心が、今や海を渡り、海外の事業会社の社員にも伝わっている点が素晴らしいと思いました。