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持続可能な開発目標(SDGs)

明確なビジョンと社内の仕組みで、企業のサステナビリティの取組みをリードする

DSM株式会社

DSM株式会社

https://www.dsm.com/countrysites/japan/ja_JP/home.html

DSM株式会社におけるCSR・SDGsの取組みを、同社の代表取締役社長 中原雄司様 (中央右)、イノベーションディレクター 栗木研様 (右からお二人目)に伺った。

ーまず御社のサステナビリティ活動に関する取組みをご紹介いただけないでしょうか。

SDGs/サステナビリティの取組みは、特に栄養、気候変動・エネルギー、循環経済・バイオベーストエコノミーの3つの事業領域に注力しています。SDGsのゴールで言うと、栄養はSDGゴール2と3、気候変動とエネルギーはゴール7と13、循環経済はゴール12に関連しています。気候変動に関連する取組としては、高機能なエンジニアリングプラスチックで金属を代替することによる自動車の軽量化・燃費改善への貢献、太陽電池や蓄電素材の効率化への貢献などがあります。循環経済では、持続可能な塗料に使う樹脂や完全リサイクル可能なカーペット材などを開発、生産しています。社会のニーズを先取りするという気持ちで、環境規制が入りそうなところに先んじて対応するとともに、議論がその方向に進むようにアドボカシーも行っています。まずビジョンを明確にしてから取組んでいく体制・社風の中で、ボトムアップよりはトップダウンのアプローチで物事を進めるケースが多いですね。

サステナビリティ活動抜粋

ーサステナビリティ戦略を進めるために具体的に実践されていることについて教えてください。

サステナビリティ戦略として、①自社プロセスの変革、②技術・製品を通した事業成長、③市場の変革のリードを掲げています。①自社プロセスの変革では、操業に伴うCO2排出や環境汚染物質の削減などを行っています。②技術・製品を通じた事業成長では、環境に対応した製品を販売することで、実際に世の中の排出量削減を目指すなど、事業の成長と顧客の課題解決の同時達成を目指しています。化学業界は大きな排出源ではあるものの、自社の排出量よりも製品を通して他者が削減できる量の方が大きいため、そうしたことへの対応も非常に重要です。③市場変革のリードとしては、世の中全体が良いサイクルに入っていくようにサポートをして、正しい規制、マーケットメカニズムが入るような試みを実践しています。例えば、当社はインターナル・カーボンプライシングを導入していますが、企業が低炭素商品を積極的に開発する仕組みができることが大切です。先日、日本でカーボンプライシングに関する環境フォーラムを開催した際には、イベント名に「ビジネスチャンス」という用語をつけることで多くの方からの賛同を得ることができました。

これ以外にも、社員に自身の仕事と持続可能性との結びつきに気づいてもらうため、社内教育と啓発活動を行っています。社員、お客様、周辺自治体の市民を対象として、ナショナルジオグラフィックとのパートナーシップによりレオナルド・ディカプリオ主演の環境ドキュメンタリー映画の上映会を開催したりもしました。

事業が規制されて、ただ測定・報告の負担が増えると社員が思いこむことは避けたいと考えています。むしろ事業を通して、環境に対して良いインパクトを与えていることへの気付きの機会を提供したいと思っています。一般的には3年や1.5年のサイクルで事業計画を立てる企業が多い中、DSMは5ヵ年サイクルで計画を立ててきました。気候変動・エネルギー、高齢社会、健康とウェルネスなどのメガトレンドを見て、そこから5カ年計画に落とし込んでいきます。ビジョンは明確にするが、運用はフレキシブルにするよう心がけています。多くの日本企業は、運用は明確で、ビジョンがあいまいであるため、逆であるといえます。日本の美徳は無言実行ですが、欧州の美徳は有言実行であり、そうした観点からも、アプローチに違いが生じているのかもしれません。

ー2020年目標を立てられていますが、どのような考えに基づき設定されたのかについてお聞かせください。

商品を売ることによってどれだけ人を助けることができるのかを考えることが必要です。アフリカでDSMはプラントを持っていますが、明確な目的を見据えてゴール設定をしています。プラント近隣の人々を雇用し、自立経営を可能にしようとしています。また、妊婦の人々の栄養を良くしようという目標も立てています。赤ちゃんはお母さんの中にいる期間を含めた最初の1000日間が非常に重要なため、そこでどのように貢献できるのかを考えることが重要です。他には、100%リニューアブル・カーペットを事業化しています。アメリカでは埋め立て地でオムツに続いて、カーペットの廃棄が多いと言われています。そのため、再利用可能なカーペットを開発、販売しています。

ー今後の社会がどう変わっていくか分からないのに、長期目標はたてられないという意見も聞かれますが、御社はその点についてどのように考えていますか?

根底にある考え方として、世界規模の問題に対応するのは政府だけではなくなってきた、ということがあります。主導権が政府から自治体や企業に移っていることは明らかで、企業がどう変化するかによって将来の世の中が変わってきます。気候変動は企業の技術で解消する必要があり、そのためには企業はビジョンを示さなければなりません。DSMも企業規模は大きくないですが、World Economic Forumなどの場に積極的に出ていって、ビジョンを出したり、発信したりしていくことを重視しています。そうした機会を活用する上で、DSMは長期ビジョンを構築しており、5カ年計画で3つの意識すべきサステナビリティの課題(健康、気候変動、循環経済)を選定しています。

ーお話を聞いていて、確かに企業がビジョン作りからリードしていくという姿勢は重要だなと感じました。サステナビリティ目標を達成するための仕組みなどはあるのでしょうか。

DSMでは、「GHG efficiency improvements(GHG効率化)」、「Employee engagement(社員のエンゲージメント(社員の愛着度))」、「Safety(安全性)」などについてサステナビリティ目標を設定しており、この達成度が役員のボーナスに影響する仕組みを構築しています。社内のトップ300人を対象として、上の立場になるほどサステナビリティ目標の割合が大きくなり、CEOになると半分がサステナビリティ目標、残り半分が財務収益の達成度で評価されます。

この他にも、自社独自の取組みとして、環境影響(CO2排出、資源採取、廃棄など)において優れた製品グループをECO+(エコプラス)solutionsとして提供しています。また、労働条件や健康状態といった基準に沿って社会影響を測定し、高い評価を得た製品をPeople+(ピープルプラス)solutionsとして提供しています。これらを総称したBrighter Living solutionsは、現在DSMの製品ポートフォリオの60%を占めるまでになりました。この取組みを開始した当初は、事業部からネガティブな反応が示されましたが、原材料の調達状況をより細かく考えるようになり、結果的に事業リスクの回避につながっています。

Brighter Living solutionsのクライテリアには最低点が設定されており、それを通過すると認定されます。他社製品で競合するものと比較したうえで優位性があるかどうかを見ており、クライテリアはそこまで高くないのですが、このプロセスの中で考えさせる効果が大きいと言えます。また、営業などが顧客に製品アピールをする際にも、この取組みを伝えていくことができるようになります。従業員もこれを良いものと捉え、社会貢献を実感できる機会でもあるといえます。こうした取組みは社内のサステナビリティの共通言語づくりにも非常に役立っており、社員の意識付けにも役立っていると言えますね。

DSMがかつて石炭公社であった時は、20年先を見越して、計画経済的に炭鉱を掘ってきました。そうした遺伝子があったことからも、DSMには長期的なトレンドを把握し、長期の計画を策定する風土があるのではないかと考えています。SDGsやこうしたサステナビリティへの取組みが企業広告に使われてしまうケースもありますが、従業員に対してネガティブなことを隠したままやっていくのではなく、従業員自身の気付きにつながっていくことが重要であると考えます。また、この取組みは現場からの意見が求められるため、現場の声を拾うことにもつながっています。こうして、DSMの取組みは外部機関からも高く評価され、Dow Jones Sustainability Indexでも過去14年間に業界1位を7回獲得しています。

Brighter Living solutions

ー市場変革をリードするために、御社はアドボカシー活動にも注力していると思います。具体的な取組みについてお聞かせいただけないでしょうか。

CEOのフェイケ・シーベスマは2016年、世銀カーボンプライシング・リーダーシップ連合の共同議長に任命され、世界でのカーボンプライシングの普及に努めています。またDSMでは、社内向けにインターナル・カーボンプライシングを導入しています。炭素価格はCO2で1トンあたり50ユーロに設定しています。50ユーロは、充分にインパクトのある分かりやすい数値として設定しました。そしてBusinss as usualのケースと炭素価格を考慮したときのビジネスケースの両方を検討します。これは事業の投資計画をするときに、必ず検討するプロセスです。Future proofingという社内用語があり、もし50ユーロの価格が導入されたら、どのように対応していけるのか?を考える取組みです。これは経営陣が肌感覚を得るために非常に重要で、会社内で事前に導入しておけば、カーボン・プライスが実際に導入されても慌てないですみます。実際に導入すると分かりますが、導入を決めさえすれば簡単に動くと言うものではありません。どのガスを測るのか、計測はどうするのか、報告はどうするのかなどを様々なことを検討する必要があるのです。

カーボンプライシングの導入を決めて、一番喜んだのはCFO(チーフファイナンスオフィサー)でした。財務の話とサステナビリティの話が共通でできるようになり、大動脈である経理部門が重要性を認識できるようになりました。従来はサステナビリティ担当を別立てにしていましたが、一緒に数値化したことで、経営部門や財務部門などもサステナビリティ分野に対応していけるようになったのです。

アドボカシー活動抜粋

「フェイケ・シーベスマCEO(写真中央、潘基文前国連事務総長の右隣)は2016年に世銀カーボンプライシング・リーダーシップ連合の共同議長に任命」

ー政府との対話などを通して、日本で強化すべきところはどこであると考えていますか?

日本にはすばらしい環境対応技術が多数あります。日本企業は、自社の排出削減もさることながら、世の環境対応の流れをビジネスチャンスとして捉え、自社技術をどのように「環境市場」や「低炭素市場」で売り出していくのか、同時に追求していくべきだと思います。また、こちら新しい市場に対する感度を上げるために、インターナル・カーボンプライシングなどの仕組みは取り入れやすいかと思います。DSMではすでにカーボンプライシングの実績がありますので、そうした取組みから得た教訓を共有したいと思いますし、アドボカシーを進めて、まとまりつつあるコンテンツを広げていきたいと思っています。

ー本日は貴重なお話をお伺いすることができました。有難うございました。

(取材・文=GCNJ堂脇智子・IGES吉田哲郎/小野田真二/加藤瑞紀 取材日2017/12/21)

取材こぼれ話
同社はオランダに本社のあるグローバル企業であり、今回伺った東京オフィスでは、オランダのカラー「オレンジ色」を基調とした、心躍る配色の会議室でのインタビューとなりました。会議室に掲げられている「企業理念/フレーズ」は、シンプルでありながら力強く、役員・従業員の皆様の社会課題解決への熱意を感じることができました。