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持続可能な開発目標(SDGs)

『エコプロ2016』をきっかけにSDGsを事業部門に浸透、社内コミュニケーションの深化から見えたDNPのサステナビリティ経営

大日本印刷株式会社

大日本印刷株式会社

http://www.dnp.co.jp/

大日本印刷株式会社(以下DNP)におけるSDGsの取り組み状況について、社内浸透活動を中心に、同社CSR・環境部の森浩二部長、同部CSRグループの佐藤淳リーダー、福地寿江様、ならびに同部環境グループの鈴木由香様に伺った。

― 最新の御社「DNPグループCSR報告書2017」にはSDGsの記載がたくさんありますね。

はい。今回の報告書はトップメッセージに「『持続可能な開発目標(SDGs)』への対応」という見出しを入れたことが大きな前進です。
DNPは、4つの成長領域*で社会課題の解決を目指しており、そんな私たちが目指す社会をSDGsに結び付け、「DNPグループビジョン2015」と合わせて、メッセージを発信しました。2015年10月に新しくしたこのビジョンでは、“新しい価値を生み出し、社会課題の解決に貢献する”という大きなメッセージを出していますが、これをいかにビジネスに落とし込んで活用していくのかについては、まだまだ模索が続いています。DNPが持続的に成長し、社会を持続可能にするために、どのような企業になっていこうとしているのかを、社内外のステークホルダーにきちんと説明ができるように検討を進めています。
*4つの成長領域:「知とコミュニケーション」「食とヘルスケア」「住まいとモビリティ」「環境とエネルギー」


持続可能な社会

―SDGsの国連での採択後、御社内ではどのような変化があったのですか?

DNPは事業が多岐にわたっていて、トップダウンで何でも決めるというよりは、事業部ごとに活動を積み重ねて成長する風土があります。得意先企業の数は約3万社にも及びますので、実務ベースではトップダウンの指示を待っているわけにはいきません。まず、我々CSR・環境部では、SDGsを2030年に向けて社内を動かすための、社員が自ら動いていくための大きなきっかけにしたいと思いました。
また、日経新聞がESG投資の対象企業を1面で大きく取り上げたことはインパクトがありました。DNPはGPIFの3つのESG投資指標すべてに選定されており、また現在、自分たちが解決すべき社会課題は何かという問いへの答えを事業部や関係部署とともに考えています。社内ではSDGsを事業の主流にするという以前に、共通言語としてまずはコミュニケーションを始めています。

― 実際、SDGsをどのように認識していらっしゃいますか?

SDGsはBtoBビジネスとの親和性が高いと感じています。なぜかというと、事業部門の開発者は顧客企業の要望に応えようとしますが、開発した最終の製品・サービスが社会にどのように役立っているのかは見えにくい立場にありました。それに対して、CSR・環境部がSDGsの視点に立って製品・サービスの特長を意訳すると、社会課題の解決との結びつきが見えるようになります。社会的な価値の創造に自分たちが関わっていると認識することで、社員のモチベーションアップにもつながっていきます。更に、得意先を通じてだけではなく、「自分の目」で社会や生活者の動向・課題を見るように意識や行動も変わっていきます。SDGsが社内に浸透すると、CSR・環境部と事業部門とのコミュニケーションが活発になり、その結果、製品・サービスに対する視点の見直しを通じて価値を上げていくという正のサイクルが生まれます。
また、顧客企業やパートナーから逆にSDGsに関わる情報や相談をいただくことも多くなっていますね。やはり、SDGsが水や環境といった単独のイシューでなく、色々な社会課題が複合的に定義されたものなので、普及したのではないでしょうか?

― SDGsの普及が一気に高まるメルクマールのような出来事があったのでしょうか?

2016年12月の「エコプロ2016」において、SDGsを展示の切り口にしたことが大きかったですね。
正直なところ、出展を決めた時点では社内でのSDGsの浸透度合いはとても低く、具体的な材料などが整理されて揃っていたわけではありませんでした。そこでCSR・環境部主導で企画を進めることにしたんです。
最初の頃は、CSR・環境部がまたわからないことを言い出した、と思われていました。取り組みを開始した頃の事業部とのミーティングでは、自分が何のためにミーティングへの参加を要請されたのかわからないと言っている社員もいたほどです。DNPは社会課題の解決に向けた製品・サービスの開発に取り組んでいますが、世界で深刻化している気候変動や人権などの問題と、自分たちの目の前の仕事とのつながりがなかなか想起しづらい部分がありました。そこで、SDGsという世界の共通言語を用いることで、自分たちの仕事がそれらの世界的な社会課題を解決し、より良い社会づくりにつながっている、ということを共有するよう働きかけました。その結果、自分たちの製品やサービスが機能や技術の強みに加え、実は世界的な社会づくりのゴールにさまざまな形で貢献できる可能性があるじゃないかという、社員の気づきにつながりました。社員の中でも特に若手にこの思いが大きく響いたようです。議論を重ねた結果、「エコプロ2016」では、一般生活者にも分かりやすい製品・サービスを選び、SDGsの掲げる社会課題の解決にも寄与できる点にまとめなおして展示することになりました。開催日が決まっていますので、出展に向けてSDGsを懸命に社内に広めることを行いました。
SDGsにフォーカスした出展は他社も行うのではないかと想定していたのですが、なんと2016年度はDNPとわずかな企業だけがSDGsに触れており、世間に先駆けた活動紹介ができました。思い切ってSDGsを取り上げてよかったと思います。

エコプロ2016抜粋

― 会社が「エコプロ」を通じて一つになれたのですね。その後、新たな展開はありましたか?

「エコプロ2016」をきっかけに、パッケージ分野の事業部をはじめ、様々な部門で事業とSDGsの結びつきを意識して、活発に動き始めていますね。食品や飲料、日用品などのパッケージを作るこれらの部門はエンドユーザーに比較的近いこともあり、活動を進めやすいのかもしれません。自分たちでSDGsの17のゴールに合わせて目標を策定してロゴを活用したり、合言葉をSDGsと関連付けてみたり、プレゼンの資料にSDGsのロゴを入れてみたりと積極的に工夫しているようです。
パッケージの工場から出る余白紙を再度紙製品として生まれ変わらせる「資源循環システム」も構築しました。製品化の第一弾として、DNPの国内各拠点の応接室などで使用するコースターを作りました。今、顧客企業の製品にもこのシステムを活用していただくように働きかけています。これは、SDGsの目標12・13・15に関わるもので、資源生産性の向上や不要物の再利用の推進、資源循環の取り組み推進、さらには持続可能な森林資源の利用を目指した取り組みです。最終的にはパッケージからパッケージへの循環型製品を作りたいと思っています。

  • JICA地球ひろばでの展示
    JICA地球ひろばでの展示
    JICA地球ひろばでのセミナー
    JICA地球ひろばでのセミナー

    最近は社内での急速なSDGsの普及を実感していますし、社外のパートナーとの新たな動きも出始めました。エコプロ展にはJICAも出展していて、そのつながりからセミナーなどでの連携が始まりました。もともと東京・市谷のDNP拠点のはす向かいに「JICA地球ひろば」があって、“お隣さん同士”ではあったのですが、それまで特に一緒に活動したことはなかったんですね。SDGsを共通言語にコミュニケーションが進んだおかげで、これまで関係性の薄かった皆様ともつながるようになりました。


― CSR・環境部のご苦労ややりがいが伝わってきます。御部の活動についてもう少し詳しく教えてください。

もともとは1972年に設立した環境部から始まりました。当時は、大気汚染や産業廃棄物などが社会問題となっており、環境関連の法令を遵守する“守りの業務”だったといえます。2004年にCSR推進室ができましたが、環境部門とは別組織のままでした。それが2016年に合体して一緒の部になったんです。CSR推進室として、守りだけでなく“攻め”の情報発信もしていかなくてはいけないと認識していたので、CSRと環境の機能と組織が一緒になったことで活動が活発化してきました。それぞれの専門の強みが違うので、うまく補完しあって、多様な議論ができるようになったと思います。お互いにとても刺激を受けています。それからIR部門との関係も良いですよ。現在は、IR、環境、CSRがすべてつながって各種レポートの作成などを行っているので、発信力のアップにつながっていますね。
最近は、年に数回開催される社内展示会などにもCSR・環境部として参加し、開発や営業、企画など、様々な部門の社員にSDGsを知らしめる活動をしています。とにかく、CSR報告書だけでなく、社内報や社内方針説明資料、全国の拠点にあるデジタルサイネージ等、社員の身近なところで、よく目につくようにSDGs関連の情報を入れ込むようにしています。その際、担当の福地(さん)、鈴木(さん)の個人の名前と顔を記載して、気軽にCSR・環境部に問い合わせてもらえるように、顔を売る工夫をしてみました。その効果もあって、事業部門からの問い合わせが増えていますね。以前は本社部門と聞くだけで敷居が高かったり、むしろ怖がられていたりしたのですが、そのハードルが下がって問い合わせしやすくなったようです。担当している顧客企業からDNPのCSR・環境活動について聞かれたことへの回答方法や、SDGsをビジネスチャンスにつなげるためのアドバイス、CSR・環境に関連したビジネスのインキュベーションや視点の提供など、幅広いやり取りが行われています。2018年は社内コミュニケーションをさらに密に行い、社外にも活動の成果を発信していけるようにしていきたいと思います。

(取材・文=GCNJ上野明子/泉沙織・IGES加藤瑞紀 取材日2017/11/15)

取材こぼれ話
市ヶ谷の坂の上に位置するDNP本社一帯に、多様性あふれる自然の森「市谷の杜」が広がっており、都市における新しい森づくりが進んでいます。既に約6000m2ほどのエリアが緑化されていて高木・低木だけでも30種以上、下草・野草含めると100種以上。まさに都会の中のオアシスです。