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持続可能な開発目標(SDGs)

音と音楽のビジネスで、音楽文化醸成と包摂的で豊かな社会を ―― ヤマハによるSDGsへの貢献

ヤマハ株式会社

ヤマハ株式会社

https://www.yamaha.com/ja/

ヤマハにおけるSDGsへの取り組み状況を同社総務部CSR推進グループリーダー阿部裕康様に伺った。

― 最初に、御社におけるSDGsの認識について教えてください。

これまでヤマハはCSRを進めるうえで、CSVも含めて様々な考え方、アプローチ方法を検討してきました。昨年、推進を強化すべきCSR課題を「戦略的CSRテーマ」として選定し、中期経営計画に組み込みました。持続可能な社会への貢献を目指し、10年先を見据えたバックキャスティングで目標設定をしていますが、SDGsが登場したことで、持続可能な社会を実現するための課題が何なのか、誰もがイメージしやすくなったと感じています。

社長の中田はSDGsを経営や事業活動に取り入れていくことの重要性を認識しており、昨年6月の国連グローバル・コンパクトCEOインタビューにおいても、SDGsについて自身の考えを述べています。グループ全体でもSDGsについての理解を深めるため、経営会議の場やイントラネットでの情報共有、ポスターによる浸透活動などを展開しています。
今後は、現在取り組んでいる諸活動とSDGsの整合や、新たな事業機会やリスクの抽出などを実施していくことになります。

― ヤマハの活動とSDGsはどのように関連するのでしょうか。CSRレポートを拝見すると、ベトナムでの器楽教育の導入支援など様々な活動が紹介されていますが、これらはビジネスそのものなのでしょうか?それとも社会貢献的な色合いが強いのでしょうか?

ヤマハが目指しているのは、世界の人々の音楽を通じた心豊かな生活と快適な社会の実現です。SDGsに関連する取り組みは、以前からも行ってきており、ゼロから始めるものではありません。我々の音・音楽事業に最も関連の深いSDGsはゴール4「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」だと思っています。あらためてこの領域に焦点をあて、音・音楽ビジネスを通じて教育、生涯学習促進への貢献度を高めていきたいと思っています。ヤマハの事業は、製品・サービスの提供にとどまらず、音楽文化の発展にも貢献し、人々のつながりを強め、幸福度を高めると信じています。これは社会秩序や包摂的な社会の形成に繋がるため、ゴール16及びSDGs全体にも貢献すると言えますね。
器楽教育の導入支援は、戦略的CSRテーマの取組みとして、将来のユーザー育成も見据えています。現在は無償に近い形で支援を行っていますが、ASEANはヤマハの主要ターゲット市場の1つであり、将来的にはこうした市場でビジネス機会を得られることも期待できると思っています。

― ベトナムでの器楽教育の導入支援について、もう少し詳しく教えてください。

ヤマハは、楽器演奏の楽しさをより多くの子どもに体験してもらうための「スクールプロジェクト」を、マレーシア、インドネシア、ロシア、ベトナムで展開してきました。ベトナムでの活動は義務教育への器楽教育導入支援で、2016年に文部科学省が推進する「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」にも選定されています。
これまでベトナムでは、小・中学校ではカリキュラムに器楽教育が含まれていませんでした。器楽教育には、感情表現の幅を広げたり、他者との協調や責任感の醸成といった教育上のメリットもあります。「EDU-Portニッポン」の取組みを踏まえ、ベトナム教育訓練省は2019年以降予定されている同国の学習指導要領の改訂時に器楽教育を導入する予定で、ヤマハはクラブ活動での試行、教材開発や教員養成支援を通じて協力しています。若年世代の人口が増加中のベトナムで器楽教育に親しんだ生徒の皆さんが将来演奏するようになれば、楽器市場の拡大も見込まれます。

― SDGsとも関連して、他にはどのようなサステナビリティ活動を実施していますか?

事業と直結する活動は他にも色々あるのですが、社会への負のインパクトを回避、低減するための対応として最も注力しているのは木材の責任調達です。これはSDGsのゴール12とゴール15に大きくかかわります。楽器を作るうえで木材の調達は必須であり、木材の調達過程においてサステナビリティを担保することに留意しています。
ヤマハはタンザニアで、木管楽器の材料であるアフリカン・ブラックウッドを持続的に利用できるビジネスモデル構築のためのプロジェクトを、JICAの支援を得て実施しています(※「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」、現:「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」)。このプロジェクトを始めたきっかけは、持続可能な調達への危機感、つまり資源は無尽蔵にはなく、自分たちで手当てしないと自然資本を枯渇させてしまうことになりかねない、との認識からでした。実際に現地に行ってみると、地元には森林管理のノウハウがなく、伐採した木材の多くの部分を廃棄していたり、運搬上の無駄もあったりと、環境的にも経済的にも持続可能な調達とは程遠い状況であることを目の当たりにしました。そこで色々指導することで生産性を高めるだけでなく、雇用も生み、持続可能な調達に結び付くようにしています。
この活動は、2015年に林野庁補助事業「途上国の持続可能な森林経営推進事業」として始まり、翌年にはJICAのプロジェクトに選定されました。こうした外部パートナーとの協働は本活動を実施するうえで強力な後押しとなっています。

― 持続可能な森林経営やFSC認証材の調達の実現には、克服すべき課題が多いのですね。

調達する木材には意図せず違法伐採されたものが混入する可能性があります。まずはどこの地域で伐採されたものかを確認し、合法性が担保されない木材の調達をなくしていくことを中期経営計画にいれています。2016年度はサプライヤーの協力のもと、調達している木材のトレーサビリティ調査を行い、厳格なリスク評価を開始しました。今後は、合法性の確認を100%にする予定です。経営上の重要なリスクとして認識しており、この取組みに本腰をいれています。
認証材は、合法性はもちろん持続可能性も担保しているので、将来的には認証材の調達比率を極力高めたいと思います。しかし樹種によっては認証材の供給量が不足しているなど、簡単ではありません。認証材の普及にはまだ課題があると言えます。

― GPIFのESG投資銘柄に選定されました。情報開示に関してどのようなことを心掛けていますか?

短期的な収益だけでみてしまうと、CSRのような中長期的な成果を求める活動へのリソース投入は優先度が低くなりがちな現状があります。しかし統合思考、ESG投資の高まりは、21世紀の会計システムに、持続可能な社会に必要な資本の概念が導入され始めたと考える必要があるのではないでしょうか。これまでビジネスに必要とされてきた財務資本、製造資本、知的資本、人的資本に追加して、社会関係資本と自然資本が入ってきたとすると、例えばベトナムでの活動は社会関係資本、タンザニアでの活動は自然資本を増強するための投資となります。会計システムに組み込まれれば、投資家の皆さんの理解も得られやすく、経営における重要性も大きく変わります。
この数年で、スチュワードシップ・コードの導入、SDGsやパリ協定の採択など、世界が大きく変わり、金融の世界も動き出したと認識しています。GPIFの動きはESGに大きな影響をもたらしていますね。
ヤマハ社内でも情報開示の必要性への理解が深まってきたと感じます。ESG投資銘柄に選定されたことは大変喜ばしいですが、指数の構成銘柄は四半期ごとに見直されるため、今後さらに本質的な活動の推進と情報開示の拡充に努めていきたいと思います。

― 最後に、国連グローバル・コンパクトに署名してよかったと思いますか?

私がCSRに携わった当初は、CSR部門の業務の中心は社会貢献活動や寄付という、いわゆる狭義のCSRでした。その後社会でのCSRの意味合いが広がってきて、業務の領域が急拡大してきたと感じています。このような社会の変化に気づき、CSRを推進してこられたのも、国連グローバル・コンパクトに署名し、様々な企業の方々や情報に接したからで、GCNJのメンバーになって本当に良かったと思います。GCNJの分科会に参加すると、先進的な他社の取り組みに刺激を受けることが多く、自分たちの意識も変化しました。私たちCSR部門のスタッフは、国連グローバル・コンパクトの活動で吸収したことを社内に展開していく役割も負っていると思います。グローバル企業としてやるべきことを認識するだけでなく、大いに実践していきたいと思います。

(取材・文=GCNJ上野明子/泉沙織・IGES小野田真二 取材日:2017/11/9)

取材こぼれ話
ヤマハ従業員は阿部さんも含め多くが音楽愛好者。特に最近の新入社員の方は皆さんなんらかの楽器演奏をたしなむそうです。趣味が仕事につながり、そして社会に還元されていくというのは大変素敵なことだと思うばかりです。