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持続可能な開発目標(SDGs)

世の企業の真逆を行く、パタゴニアが実践するサステナビリティ経営

パタゴニア日本支社

パタゴニア日本支社

http://www.patagonia.jp/

パタゴニアにおけるサステナブルな取り組みと事業の関係を、同社環境・社会部門ディレクター佐藤潤一様に伺った。

―本日は、パタゴニア、特に日本支社におけるサステナブルな事業展開についてお聞きします。まずは、なぜ環境問題のような社会課題の解決に積極的に取り組むのか、その背景から教えてください。

創業者のイヴォン・シュイナードはクライマーです。クライミングの際、岩に打ち付けるピトンという道具が岩場を傷つけて破壊してしまうことに心を痛め、大切な岩場を守れるように既存のピトンを改良し事業を起こしたのがパタゴニアの原点です。よって、自然環境の保全が事業の根底にあります。ビジネスを目的ではなく環境課題を解決するための手段として位置づけているのです。こうした思いがパタゴニアのミッション・ステートメントに反映されています。

ミッション・ステートメント

このミッション・ステートメントは社内に浸透していて、行動の判断基準になっています。ストアで働くスタッフもこれを強く意識して接客しています。物を販売するだけが彼ら、彼女らのミッションではないので、お客様に新しい商品を勧めるのではなく、すでに持っている物を修理してお使いいただくことをお薦めしたりもするわけです。長く同じ商品を利用するほうが買い替えるよりも環境にいいですからね。


―接客のマニュアルでそういう姿勢を指導しているのですか?

接客マニュアルのようなものはないです。むしろ、各スタッフがお客様との会話を楽しみながら、ミッションに沿った判断をして自らの言葉で対応して欲しいというのがパタゴニアのやり方です。今のアパレル業界の大量生産大量消費という環境破壊の傾向を考えれば、お客様には本当に必要なものだけをご購入していただきたいと考えるでしょうし、むやみに新しい商品に買い替えるのではなくすでに持っている服を長く使っていただきたいと思うのはごく自然なことなのです。パタゴニアのこうした姿勢が評価され、2017 Sustainability Leadersで2位に選ばれました。規模は小さいですが、社会への影響を大きくして他の企業にも良い影響を与えられればと考えています。


― パタゴニアの中で、日本支社が進めるサステナビリティ活動はどのようになっていますか?

  • 消費の在り方抜粋

    私たちは、気候変動や生物多様性が急速に失われている現状に歯止めをかけたいと考えています。そのために、日本では①消費の在り方、②自然保護、③農業の在り方、そして④エネルギー転換という4つの領域にフォーカスしています。
    最初の消費の在り方ですが、国内のアパレル新商品が実際に販売されるのは約50%と言われています。つまり、残りの半分は販売すらされることなく廃棄され、購入された商品も短期間で使われなくなります。私たちは高品質のものを長く利用してもらうために、「WORN WEAR®:新品よりもずっといい」という考え方を展開し、修理や再利用を通じてパタゴニアの製品をより長く使い、また、修理がもはや不可能になった際はリサイクルにだすという選択肢を提供しています。子ども用の製品は、その子が大きくなった後、他の子どもに回して着てもらえるように持ち主の名前を書き入れるタグも大きくしています。またアメリカでは「ブラックフライデー」*に合わせて、「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という広告をニューヨークタイムズに出して、安易に新品の商品を購入しないように呼びかけて反響を呼んだこともありました。
    *アメリカ合衆国の11月第4木曜日感謝祭の翌日の金曜日のこと。感謝祭明けにスタートするクリスマスのセールにより、小売店が黒字になることから、こう呼ばれる。

二点目の自然保護は、パタゴニアの創業精神そのもので、売上の1%を世界中の環境団体に寄付するというスキームがあり、米国と日本では社員が委員会を作って助成先を決めています。その際、他の企業や財団が寄付しないような小規模の団体を選定しているのが特徴です。日本では、たとえば生物多様性の豊かな海を守るための「上関ネイチャープロジェクト」を支援しています。この団体は100年後の子供たちに上関の自然(奇跡の海)と暮らしをつなぐための拠点づくりに取り組んでいます。また、身近なところでは、私たちのストアがある横浜市に位置する横浜最大の大自然といわれる上郷・瀬上沢緑地の保全活動を支援しています。パタゴニア自体がこの活動への協力を表明し、横浜のストアのスペースを使って市民と一緒に環境保全の取り組みなども行いました。

三点目は、健全な土壌を回復するための環境再生型農業です。パタゴニアは最近、オーガニックの食材を使った食品販売もはじめており、有機農業を広げるとともに、土壌を健全化する環境再生型農業の普及にも力を入れ始めました。最後のエネルギーに関しては、再生可能エネルギーの拡大を目指し、一部のストアでは太陽光パネルを設置するなど再生可能エネルギーをつくるというようなことを始めています。


自然保護抜粋

―通常の企業から見るとドラスチックな取り組みもたくさんされていますね。どうして御社ではこのような取り組みを行えるのでしょうか?

創業者は、「私たちの株主は地球だ」と考えており、その経営方針を貫くために株も公開していません。よって、経営の意思決定をミッション・ステートメントに沿って行うことができます。しかも、2012年1月にカリフォルニア州ではじめてBコーポレーションとなりました。Bは「ベネフィット(利益)」を意味し、労働者やコミュニティー、そして環境への利益を指します。このようにしてパタゴニアらしさを今後100年は担保していきたいし、他の企業を変えていきたいと考えています。だからこそ、まず何よりもパタゴニアがビジネスとして成功していることが重要なのです。 フェアトレードを例に挙げてみましょう。パタゴニアはフェアトレード認証プログラムを通じて製品を工場に発注するごとにプレミアムを労働者に直接払っています。こういったプログラムは、他の企業が参加することで労働者の環境改善と言う変化をもたらすことができます。実際パタゴニアがフェアトレードプログラムを始めて、製品の売り上げも伸びることで、他のブランドが参加するなどの変化が起き始めています。

― 御社が「アクティビストカンパニー」を掲げているのがよくわかる事例ですね。日本のパタゴニア商品購買者にも同様の購買行動が見られるのでしょうか?

  • アクティビストカンパニー抜粋

    アメリカですと、環境配慮性が購入理由の高い順位にあがります。日本の場合、ファッション性、機能性だけを重視する傾向があります。だからこそ、日本のカスタマーにとって人気のある製品が、地球にとっても最高の製品であることが大切なんだと思います。昨年、リニューアルした横浜のストアでは色々な人が集えるよう、店舗にコミュニティスペースを設置する試みも始めました。ストアをモノを販売するだけの場所ではなく、地域コミュニティーのために人が集える場所にしたいという思いがあります。

―最後に、佐藤さんの前職はNGOだったそうですが、パタゴニアに転職して異なる手ごたえを感じていらっしゃいますか?

私の所属していたNGOの役割は、企業が環境問題等に取り組まないことをリスクだと理解させることにありました。でもそれを「いかに」進め解決のためのイノベーションを生み出し、他企業への好影響をもたらすのが企業の役割だと思います。同じことを提案してもビジネスサイドにいると意見が受け入れられたりするのは日本社会の特徴かもしれません。一企業だけでは社会を変えることはできないので、これからも仲間を増やしていきたいです。

(取材・文=GCNJ上野明子/泉沙織・IGES加藤瑞紀/矢野さやか 取材日:2017年12月5日)

取材こぼれ話
パタゴニアは個性的で先進的なブランドイメージから、俗にいうイノベータ、アーリーアダプターのような層をターゲットにして差別化を図っているのかと思いきやさにあらず。より多くの人を巻き込んで3R(Reduce, Reuse, Recycle)+Repairの4Rで環境を守りたいという真っすぐな姿勢、一消費者としても大切にしたいと痛感した次第です。