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国連グローバル・コンパクトについて

(仮訳)

原文(英語)はこちら

透明性と腐敗防止

2004年6月24日、国連グローバル・コンパクト・リーダーズサミットの場で、国連グローバル・コンパクトの10番目の原則として腐敗防止が加わることが発表されました。すべての国連グローバル・コンパクト署名企業は幅広い協議の末に採択された第10原則に向けて圧倒的な支持を表明し、腐敗根絶という課題に取り組む責任を民間も共に負うという強いメッセージを全世界に向けて発信しました。また、腐敗防止に向けて相応の役割を果たすというビジネス界の決意も新たに示されました。

原則10  企業は、強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗の防止に取り組むべきである

今日、腐敗は世界最大の課題の一つに数えられるようになりました。腐敗は持続可能な開発にとって大きな障害となり、貧しい地域に不当な影響を及ぼすだけでなく、社会の構造そのものを腐食してしまうからです。民間セクターに対する影響も大きく、経済成長を阻害し、競争を歪めるほか、深刻な法的リスクや風評リスクを引き起こします。腐敗は企業にとっても大きな経済的負担となっており、世界の多くの地域で、事業コストが10%以上も余分にかかると見られています。世界銀行はこれを評し、「贈収賄は1兆ドル規模の産業になった」と述べています。

全世界でコーポレート・ガバナンスの規定が急速に発達していることも、企業が自社の評判と株主の利益を守るメカニズムの一環として重点的に腐敗防止措置に取り組むよう駆り立てている要素の一つです。企業の内部統制はますます幅広い倫理的価値観と誠実性の問題にまで広がってきており、企業が優れたビジネスを実践し、かつ社内の管理が行き届いていることを示す証明として、こうした統制を重要視する投資マネジャーも一層増えてきています。

さらに最近では、経済協力開発機構(OECD)の「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(日本語)や、グローバルに合意された初の国際協定「腐敗の防止に関する国際連合条約(国連腐敗防止条約;UNCAC)」(日本語)の発効(2005年12月)により、腐敗に対する国際的な法整備の機運が高まっています。

企業があらゆる形態の腐敗と闘うべき理由は多岐に及びます。

倫理的理由

腐敗は本質的に誤った行いです。権力と地位の乱用にあたるばかりか、貧困に苦しむ人々や恵まれない人々に不当な影響を及ぼすからです。腐敗はすべての関係者の誠実性を揺るがし、所属する組織の構造を傷つけます。腐敗行為を犯罪とする法律が必ずしも執行されていないという現実が、腐敗行為の正当化につながることにはなりません。あらゆる形態の腐敗と闘うことが正しい行いであることに間違いはありません。

ビジネス上の理由

腐敗行為に関与しないことがどの企業にとってもビジネス上の利益にかなう理由は、数多くあります。大小にかかわらずすべての企業は腐敗に脆く、それによってもたらされる可能性のある被害規模は無視できるものではありません。腐敗行為への関与を避けるべき主な理由としては、下記が挙げられます。

  • 法的リスク

    腐敗取引がどのような形態を取るにせよ、そこに法的リスクが絡むことは明らかです。腐敗とされる多くの行為は、それが実行された場所で違法とされるだけでなく、別の国での腐敗行為への関与が企業の本国でも違法とされるケースが増えています。外国公務員への贈賄を違法とする原則は、1977年に米国で制定された「海外腐敗行為防止法」(英語)ではじめて確立されました。それ以来、この原則はOECD全加盟国をはじめ、その他多くの国々でも法的地位を獲得しています。2003年には「国連腐敗防止条約」が採択され、この原則が広く認識されました。

    腐敗防止法の国際的な執行状況はこれまであまり活発ではありませんでした。しかし、この状況は徐々に変わってきています。法規制が不十分であるために腐敗が常態化してしまっている開発途上国や新興市場国では腐敗が政治的に重要な問題となっており、対策を講じる一方で、腐敗行為の被疑者を裁判にかけるという決意も強まってきています。また、このような事例を取り扱う能力に限界がある開発途上国の場合、外部から法的援助を受けるケースも増えてきています。そのためOECDは、加盟国が外国公務員に対するあらゆる贈賄への関与を禁止する規定の執行能力の向上を確保するうえで、重要な役割を果たしています。

    このように、法や規則の整備状況やその執行をめぐる環境は変化しているため、腐敗によって自社の事業がさらされる法的リスクを経営者が評価、定量化することはさらに難しくなっています。変化は、不確実性をもたらします。多くの大企業にとっては、他国で自社の業務を遂行するエージェントについてどの程度の責任を問われかねないか、という問題が特に重要となっています。以前は独立したエージェントである(本社は責任を問われない)とみなされてきた者の行為に関して、今日では実際に本社が法的責任を問われることもあり得るからです。

  • 風評リスク
    近年の例を見ると、企業の方針や実践が高い倫理基準を満たしていなかったり、コンプライアンスに対する態度が緩んでいたりする場合、深刻な風評リスクにさらされます。たとえ最終的な判決で腐敗行為に関与していないとの判断が下されたとしても、違法行為の疑いをかけられただけで企業の評判に傷がつくには十分なケースが多くあります。企業にとっては根拠のない疑惑が生じた場合でも、自社が透明性のある行動を取り、腐敗防止のための方針と手順をすでに導入していることを実証し、そういった疑惑を早急に鎮めることが極めて重要となります。「法律や国際基準に反することをしたかもしれないが、それは単に当該国のビジネス慣行に従っただけだ」という主張は、理由として認められません。また、「他社や競争相手も同じようなことをしている」との主張も、十分な理由にはなりません。
  • 財務コスト
    今日では、多くの国々において腐敗による民間事業経費が10%以上、公的調達費が25%も余計にかかっていることが明確に証明されています。これによって企業の業績が損なわれるだけでなく、正当な持続可能な開発のために使われるべき公的資金が流用される結果を招いています。
  • 「クリーンな評判」と繰り返しの要求
    過去に贈賄を行ったことのない企業は、贈賄の圧力をかけられる可能性も低いことが明らかになってきています。一度でも賄賂を支払えば要求が繰り返されるばかりか、その額も増えていくおそれが高まります。逆に、あらゆる形態の腐敗を毅然とした態度で拒絶すれば、その企業の姿勢は知られるところとなり、従業員が贈賄要求にさらされるリスクも低下します。例えば、中国である大企業の代表を務める経営者は最近、自社が様々な圧力にさらされながらもいかなる腐敗も容認していないことを明かしたうえで、「非寛容(ゼロ・トレランス)の姿勢以外に現実的な解決策はない」と述べています。
  • 恐喝、孤立無援、セキュリティ・リスク
    企業が腐敗行為に関与すれば、経営者が恐喝の対象となるおそれもあります。その結果、社員や工場その他の資産もセキュリティ上のリスクにさらされます。
  • 「裏切れば裏切られる」
    企業が腐敗行為に関与したか、これを容認した事実は、すぐに社内外の両方で広く知られるようになります。倫理に反する行動は社員の愛社精神を損ない、なぜ自社が対外的に高い基準を適用していないにも関わらず、社内では厳しく適用せねばならないのかという疑問が社員の間に広がりかねません。そうなれば、社内での信用・信頼関係も揺らぐことになります。
  • 企業は持続可能な社会・経済・環境開発に利害関係を有する
    今日では、腐敗がこれまでの世界の社会・経済・環境分野の発展にとって大きな足かせとなっていることが明らかになっています。資源は不適切な用途に流用され、開発に用いられるサービスとモノの質は大きく損なわれています。よりよい生活を求めて苦しんでいる貧困層には計り知れない影響が及び、社会組織自体が揺らぐことも多くあります。腐敗はずさんな環境管理につながり、労働基準の遵守を損ない、基本的人権の享受を制約します。企業は社会の安定と地域社会の経済成長に利害関係を有しています。よって、企業は間接的ながらも、市場とサプライ・チェーンの拡大機会を失うことで、損失を受けているのです。ビジネス界は、腐敗を容認させないための役割を果たす能力を有しており、それを行使するべきです。まずは、腐敗が自社の資源の適切な利用を損なうことに気づくことが重要です。腐敗の結果、地域の発展に向けられた資金は現地調達や地域経済の促進に用いられる代わりに、外国の銀行口座に行き着いてしまうかもしれません。また同時に、腐敗は競争をゆがめ、官民双方に甚だしい非効率をもたらします。腐敗が生じたほとんどの場合、調達されるサービスまたは商品は期待や契約よりも劣ったものとなります。企業の長期的な持続可能性は、自由で公正な競争にかかっています。腐敗行為はまた、薬物売買や組織的な犯罪を伴ったり、またこれを助長したりします。マネー・ローンダリングや不正な国際送金は、国際テロを支援するメカニズムとして用いられています。グローバル企業は、これら重大な国際課題に巻き込まれないよう、常に慎重を期さなければなりません。